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  COPYRIGHT(C)1998-ARAKAWA KATSUMI,SAIDIA FURAHA wo SASAERU KAI & Hikari Miura ALLRIGHT RESERVED. Illustration by Jin Kawaguchi. 禁無断転載  

 

 

 

 

 

現地サイディア・フラハの訪問レポートです。じかなる体験の、生の声をどうぞ。

サイディア・フラハに2週間滞在 体験記 2018年6月
山下俊也・彩乃 
 


私達夫婦は、2018年6月5日~6月18日にサイディア・フラハのワークキャンプに参加させていただきました。約2週間の間、ここで体験したことについて記載します。

●授業見学
サイディア・フラハにある幼稚園・小学校・裁縫教室の各授業を見学しました。デイケアと呼ばれる幼稚園のクラスは5歳未満の子供たちの教室であり、教室内は子供達の声で慌ただしく日本の同施設と変わらない雰囲気かなと思いました。しかし、年次を上げていくに連れて、日本とは違うと感じた事がいくつかありました。
まずは、プレプライマリと呼ばれる幼稚園のクラスで、子供達は算数の足し算を学習していたこと。日本でも学んでいる子はいるでしょうが、一般的ではないと思います。小学校の受験対策も兼ねているとのことですが、日本の教育より進んでいる印象を受けました。 次に、授業における先生の言葉は全て英語であったこと。小学校低学年から科目として英語を学び、小学校高学年の授業では、私たちは先生の英語に着いていくのが精一杯でした。近年、日本の英語教育も小学校からとなりましたが、ケニアには到底敵わない差を感じました。
最後に、小学校中学年から、子供達は真面目に先生の言うことを聞いている印象を受けました。どの子も能動的に授業に参加しているのが伝わり、どちらかというと受動的に参加する日本の授業と異なるかなと思いました。

●スラム見学
スラムに家がある児童のお宅を訪問をしました。これまでスラムと聞くと「治安が悪くて雰囲気が良くない」という勝手なイメージを持っていましたが、今回訪問させていただいた集落はサバンナの中に位置し、思ったよりのびのびとしたスラムでした(もちろん旅行者が単独で足を踏み入れていい地域ではありませんが)。お宅の中にも入らせていただきましたが、一通り家具は揃っていて電気もソーラーでまかなっているとのこと。少し前より生活環境が大分改善しているらしく私達の想像よりも設備は整っていましたが、何よりそこには普通の日常があって、子供達にとって帰る場所に他なりません。私達が一方的に「可哀想」などという感情を抱くのは違うのかなと思いました。

●精神障害児の学校訪問
サイディアフラハから車で数分行ったところに、精神障害児向けの養護学校があり、訪問する機会がありました。敷地はサイディアフラハの方が広いですが、こちらにも多くの子供達が在籍しています。この学校に通っている子供達の多くは学習障害(自閉症やダウン症の子供も少数いる)を抱えているとのことでしたが、授業を受けている子供達はいわゆる一般的な学校に通う子供達と何ら変わらず、真面目に先生の言うことを聞いて授業を受けていました。私達にも明るく挨拶してくれたのが印象的でした。 設立当時から比べると児童の数はとても増えているらしく、建物の増築も行なっているとのことから、こういった子どもたちへの教育について、世間の関心が高まっているのかなと思いました。

●ストリートチルドレン保護施設訪問
サイディアフラハから車で数十分行ったところにある、ストリートチルドレン向けの保護施設にも訪問する機会がありました。 私達が訪れたときは、スタッフ1名に対して子供達は20人弱いて、男の子の方が多かったです。スタッフの方に、ストリートチルドレンの実態を聞くと、ストリートチルドレンがストリートファミリーとなっていること、恵んでもらったお金でシンナーやドラッグを買っていること、施設を出てもストリートに戻ってしまう子供もいることなど、聞いていて悲しくなる事実が多かったです。
その後、子供達と一緒にお菓子とジュースを食べ、自己紹介をしてからいろいろお話ししてみました。最初は、私達をアジア人と見て小馬鹿にするシーンもありましたが笑、日本のことについていろいろ話している内に大分和めたかなと思います。簡単なゲームやダンスをしても遊んでいると、この子達もやっぱり普通の子供なんだなと感じました。生まれて育った場所がたまたま路上だっただけ、彼らにたまたま教育の機会がなかっただけで、今後彼らに機会を持ってもらうことで、ひとりの人間としてまっすぐ成長してくれたらいいなと思いました。

●HIV啓発活動の女性との話
アフリカでは男尊女卑が未だに強いと聞いていたので、アフリカの女性の現状について少しでも知りたく、HIVの啓発活動をされている現地女性とお話しする機会をいただきました。
まずHIVについて、ケニアでは近年明らかな増加はないものの多くのAIDS患者がおり、大半は女性とのことでした。ケニアにて感染が拡大した主な理由は、
sex workers(感染対策が不十分なまま、避妊具を着けると支払うお金を減らされる)
wife sharing(一夫多妻の伝統が残る地域があり、上記の風俗等で感染した夫が更に複数の妻達に感染させる)
ignorance(性感染症における無知、そしてAIDS患者に対する偏見)
と考えられるそうです。最近ではこの女性の活動のように啓発や教育が広まり、性風俗従事者も感染対策をきちんとしてAIDS患者に対する偏見も減ってはきたようですが、まだまだだといった感じでした。
また、ケニアの女性には未だに児童婚やFGM(女性割礼)の伝統が残っている地域があるそうですが、近年教育を受けた女性が増えたことでその慣習に反対の声をあげる女性も出て来たとお聞きして、少し安心したと同時にやはり教育は決して仕事を得るためのステップだけでなく自分の身を守るために必要なものだと感じました。

●サバンナ散歩
サイディア・フラハ卒業生のマサイ族男性が所有する牧場を訪問しました。牧場はナイロビ国立公園の真裏に位置し、牧場の周りのサバンナを散歩していると、すぐ側にシマウマやガゼルそして遠くにキリンが見えました!もちろん野生なので私達は大興奮!卒業生の彼は様々な国立公園でガイドの仕事をすることもあるらしく、野生動物や植物の説明をたくさんしてくださり、密度の濃い時間となりました。

●施設の女子達との交流
このワークキャンプで一番共に過ごしたのはサイディア・フラハ内の寮で暮らす女子達です。
私達にはこれといった特技もないので、正直彼女達に何をしてあげれるかなと悩んでいましたが、初日にむしろスワヒリ語をレクチャーしてもらい、それ以降は夕食の準備や掃除など(僅かですが)手伝ったり、みんなでサッカーをしたり(みんなパワフル!)、夕食後は一緒に宿題をしたりしました。ただ一緒に過ごしただけですが、日を重ねる毎に彼女達との距離が段々縮まったように感じました。夜寝る前の「今日は女子部屋で寝るよ!」と妻の私が彼女達の部屋に連れていかれそうになり夫が引き戻す、というおふざけも気付けば毎日の楽しみでした。
また、彼女達と話したり生活を見たりしていると、本当に勉強熱心で物知りだと思いました。日本の政治家や歴史について聞かれたとき、大人の私達はふと考えてしまったり答えられなかったりするのですが、彼女達は自分の国について当たり前のように知っていて自分達の意見もありました。
そして印象に残ったのが、ある時彼女達の何人かと一緒に学校外に出た時に、近くの大人達がアジア人である私を小馬鹿にした態度をとってきたのですが、彼女達が「あんなの相手にしちゃ駄目だよ、馬鹿にしてるんだから」とかばってくれたことです。彼女達のように良識を持ち勉強熱心な子達がケニアという国をより良くしていくだろうなと思います。

日本にいては体験できない、貴重な経験となりました。約2週間の間に様々な機会を設けて下さった荒川さんとMr.カルリ、そしてサイディアフラハの皆様、本当にありがとうございました。